日本のお正月といえば、お雑煮やおせち料理を食べたり、初詣に出かけたり。子どもの頃ならお年玉をもらったり、というのが定番の過ごしかたではないでしょうか。韓国のお正月をちょっとのぞいてみると、日本とはまったく違う独特の風習がある反面、日本とそっくりな部分もあったりして、とても面白いです。韓国のお正月にまずやらなければならないことといえば、なによりもご先祖さまをお祀りすること。祭祀料理を作って、ご先祖さまに新年のご挨拶をします。そのあと一家の大黒柱であるお父さんに挨拶をし、子どもたちはセベトンと呼ばれるお年玉をもらいます。このあたりは日本と似ていますよね。そしてもう1点、韓国でも日本と同様にお雑煮を食べるのです。日本のお雑煮とはちょっと違う、韓国のお雑煮を調べてみました。
韓国のお雑煮をごらんください
韓国語でお雑煮のことをトックッといいます。トッとはお餅のこと、クッは汁物を総称する言葉です。日本のお雑煮と比べてまず異なる点は、お餅の種類が違うことです。日本では餅米をついてお餅を作りますが、韓国ではうるち米(普通のお米)でお餅を作ります。そのため、日本のお餅のように、食べてもうにゅーんと伸びたりはしません。米粉をねって作ったお餅を棒状にのばし、それをナナメに薄く切ったものがお雑煮に入ります。もちろんお雑煮にするだけでなく、お餅は焼いて食べてもおいしいです。 |
スープのほうは、牛肉や鶏肉を使って作ります。かつては雉肉を使って作るのが最上とされましたが、最近では入手が難しいので牛肉や鶏肉で代用されています。牛肉は脂の少ないヤンジモリと呼ばれる胸部の肉を用いるのが最適と言われ、澄んだスープに醤油、塩、みじん切りニンニクなどで上品に味をつけます。水にひたして柔らかくした餅を入れ、具にはダシとして煮込んだ牛肉の薄切りなどを乗せます。溶き卵を加え、刻みネギやもみノリを加えると、よりおいしく仕上がります。
| お正月以外にも食べられます お正月に食べるトックッですが、普段の日にも食べることはできます。すべてのお店にというわけではありませんが、食堂や粉食店のメニューにも並んでおり、4000ウォンから5000ウォン程度で食べることができます。普通のトックッにマンドゥ(餃子)を入れたトッマンドゥクッなどもオススメです。 トックッの歴史をさかのぼってみよう
お正月にトックッを食べるようになったのがいつからなのかを、正確に知ることは難しいようです。古い文献を調べてみると、高麗時代や朝鮮時代初期にはすでにトックッを食べていたとの記述がありますが、稲作の始まりや、米を蒸すための甑の使用時期などから、三国時代以前からあったと推定する人もいます。1849年に洪錫謨という人によって書かれた『東国歳時記』という本には、湯餅(タンピョン)という名前でトックッが紹介されており、その作り方も現代のものとほとんどかわりません。『東国歳時記』には、湯餅は正月料理に欠かせないものであり、そのため俗に年齢を尋ねる際には「トックッを何杯食べたか」と言う、などといった興味深い話が紹介されています。
ところかわればトックッもかわる!? 日本のお雑煮といえば、地方ごとにそれぞれ特徴があるものです。角餅を入れるか、丸餅を入れるか。お餅は焼いてから入れるのか、あるいはそのまま入れるのか。汁は澄まし仕立てにするのか、味噌仕立てにするのか。具やダシも地方によって、家庭によってさまざまだと言います。韓国のトックッは日本ほど細かく地方色があらわれるわけではないようですが、それでも独特のトックッを食べる地域があります。 地方色あふれるトックッの代表ともいえるのが、北朝鮮に位置する開城(ケソン)の名物、チョレンイトックッ(またはチョラントックッ)。チョレンイトッと呼ばれる小さく丸い形をした餅を使って作るトックッのことです。開城の郷土料理であるため、普通の食堂でメニューにあるところはほとんどなく、北朝鮮料理を専門に出す店に行かないと食べられない特別な料理です。ソウルにはいくつか北朝鮮料理の専門店があり、ナビでもサムチョンドンスジェビという店を紹介しています。
日本でもお雑煮を食べないと正月気分が味わえないように、韓国の家庭でもトックッは正月に欠かせない一品です。文化的な共通点を数多く持つ日本と韓国。よく似ていながらも、少しずつ違った部分があります。お正月に食べるお雑煮ひとつとっても、その違いがあらわれて面白いですね。韓国に行って食べるチャンスがあったら、トックッをぜひ試してみてください。
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