フェの歴史 「世界広しといえど、魚を生で食べる国は日本ぐらいのもの」と考える日本人は意外と多いかもしれませんが、朝鮮半島でも古くから魚を生食する習慣がありました。1621年に於于堂・柳夢寅が著述した「於于野談」には文禄・慶長の役が起こった当時、明からの援軍10万人が朝鮮に長い間駐屯し、朝鮮の人がフェを食べるのを見て汚いと罵ったという記述があります。 また1614年に著された李芝峰の「芝峰類説」には「今の中国人は膾を食べない。干した肉であっても必ず火を通し、わが国の人が膾を食べるのを見て笑う」という記述が残っているそうです。以上のことから韓国の研究者の間では李朝の中期前から魚の生食文化が存在したと認識されています。 フェと韓国人 そして現代の韓国人も大のフェ好き。下の地図はナビの住む地下鉄1号線長箭洞(チャンジョンドン)駅の周辺地図です。静かな住宅地というイメージが強い町ですが、フェッチッの数にご注目ください。プサンではどの駅の周りにも、また商店街のある地域には至るところにフェッチッが存在します。日本だったら街のラーメン屋さんの数を想像するとちょうどわかりやすいかもしれません。また、プサンほどではありませんが、ソウルをはじめとする韓国各地のどの町にも、必ず何軒かのフェッチッが存在しています。
フェと刺身は似て非なるもの? フェも刺身も見た目は非常に良く似ていますが、まったく違う料理にも見えてきます。
フェの注文方式 プサンでフェを楽しむには大きく分けて2つのスタイルがあります。自分で食べたい魚を選んで捌いてもらう、フェセンター型スタイル(新東亜市場、広安里フェッセンターなど)と一般的なフェッチッスタイル。
フェの食べ方 フェは、前述した3種類の薬味で楽しみます。醤油とわさびの組み合わせは日本人にもおなじみ。そして包む・混ぜる文化を持つ韓国だけに、野菜に味噌やにんにくを巻いて食べるのも韓国ならでは。 ナビも最初は日本の醤油やわさびを持参してフェを食べていましたが、新鮮で弾力がありすぎるフェには醤油よりも、味噌が合うような気がして、以来、野菜に巻いて食べるほうが好きになりました。ただし、このような食べ方は白身魚の微妙な味わいをわからなくするという批判もあり、韓国の食品工学の学者の中には野菜とフェを別々に食べることを奨励している人もいます。 代表的な魚と相場 養殖技術の発達によって、ひらめと真鯛が非常に安価で楽しめるようになったとか。日本では刺身でほとんど食べられないウロッも3大人気魚のひとつです。
以上、刺身と似ているようで異なるフェですが、その魅力は、とにかく新鮮ありで安価であること。日本ではヒラメや鯛をまるまる一匹捌いてもらう機会はなかなかありませんよね。韓国を代表する庶民の人気メニューの1つだけに、わさび醤油などで刺身の型にはめるのではなく、葉っぱに包んで、にんにくと味噌で巻いてガブリと楽しんではいかがでしょう? 参考文献 『韓国料理文化史』(李盛雨/平凡社) 『刺身を100倍楽しむ』(チョ・ヨンジェ/生鮮鱠発展研究所) |