自分がやりたいバレエを求めて韓国へ。明日のことだけ考えて走ってきた韓国での3年半はホントにあっという間。当面の目標はソリストとして舞台に立つことです!
こんにちは!ソウルナビです。今日は久しぶりに韓国で夢に向かってがんばっている在韓日本人シリーズ、今回は韓国のユニバーサルバレエ団のメンバーとして、国内外で行われる舞台で活躍している水落杏奈さんにお話を伺ってきましたョ!ちょうど、もうすぐ幕開けとなる喜劇バレエ「ドン・キホーテ」の練習に追われているなか、少し時間を割いていただきました。ではさっそく、ユニバーサルバレエ団の本拠地、地下鉄アチャサン駅すぐのユニバーサルセンターへ、レッツゴー!!
■■
水落杏奈(みずおち・あんな)さん(24歳)■■
3歳からバレエをスタート。初めは踊りがただ、ただ楽しくてやっていたという杏奈さん。小学校に入ってからはバレエがうまくなりたい一心で、中学、高校とバレエスタジオに通い、高校3年のときにアメリカはワシントンのキーロフバレエアカデミーにバレエ留学。そこでロシアの古典バレエを習い、ロシアバレエの魅力に惹かれることに。1年間の留学を終え日本に帰国。古典的なロシアバレエを習いたいと探しているとき、現在所属している韓国のユニバーサルバレエ団を知り、見事オーディションに合格して2007年の夏、20歳のときに入団。
現在、プロのバレエダンサーとして、年間100回を越える国内外の舞台で活躍中。
●3歳から今までバレエを続けてこられたと伺いましたが、小さい頃から夢はバレリーナ?
3歳からというと、すごく長い感じがしますが、本当にあっという前でした。なんとなく「あ、この人みたいになりたい」と思ってやってきて、今に至ったという感じで。小さい頃の夢?…実は保母さんだったんです(笑)小学校の頃に、学校で「将来の夢」について書いたりするじゃないですか。でも、そのときはバレリーナって書けなかったんです。小さい頃から細くて、筋肉もなくて、どうしたらバレリーナになれるのかも分からなかったし。特に小学校のときに私が通っていたスタジオは、小学生でも全国コンクールで賞をとるような、とても頑張っているところだったんです。そのスタジオに行くと自分のレベルがだいたい把握できるので、今日は昨日よりうまくなりたいという一心で、毎日練習に励んでいました。あの頃はバレリーナになるという目的よりも、とりあえず上手くなりたい、それが最優先でした。
●3歳から日本のバレエスタジオで学び、高校3のときにアメリカにバレエ留学後、
なんでまた韓国のバレエ団に?
アメリカに留学したときに習ったバレエというのが、がちがちのロシアバレエだったんですが、その魅力にすっかりはまってしまったんです。バレエは先生やスタジオ、学校、バレエ団によって系統・スタイルが違うんですが、同じロシアバレエでも、基本を忠実に守る古典ロシアバレエをやるところもあれば、そこへモダンなテイストを加えたもの、さらには先生のアレンジが加わったところもあります。日本だと、だいたいがモダンバレエをやるスタジオが多く、帰国後にロシアバレエをやれるところを探していました。そんなとき、韓国に短期でレッスンを受けにいっている知り合いからこの学校のことを教えてもらったんです。古典ロシアバレエを主にやるバレエ団でオーディションをやっていると。韓国は基本的にロシアバレエを基本にしたところが多いんですが、私はこのオーディションにぜひ挑戦してみたい!と思いました。
●ご家族の反応は?
うちは昔からの本人の意思に任されているというか、特に反対されたことがないんです。アメリカ留学のときもそうでしたし、今回も私が「韓国のバレエ団の入団オーディション受けたい」と言ったら、すんなりOKがでました(笑)。いつも家族が応援してくれるんで、心強いです。
●韓国バレエに接したのは韓国に来てから?
実はアメリカのキーロフにバレエ留学したときなんです。キーロフには、このユニバーサルバレエ団のすぐ近くにあるソナ芸術高校からやってきた韓国の子がたくさんいました。この高校は、韓国でも有数の芸術高校で、バレエ科もとっても有名。そんなバレエのエリート校から選ばれた優秀な子ばかりが毎年やってくるので、皆とても上手で、韓国にこんな上手な子達がいるんだなって思ったのが韓国バレエに対する第一印象でした。韓国についてはあまり知らなかったんですが、その頃からなんとなく親しみがあったんですね。
●オーディションを受ける前、韓国に来られたことは?
一度だけあります。オーディションの前に一度レッスンを受けに来ました。そのときに学校の雰囲気も見ていてどんなバレエをするかはわかっていたので、オーディションを受けることはもちろん、韓国にくることに躊躇いはなかったです。それに、アメリカ留学の時に出会った韓国人にも知り合いもいましたし。
そして、次の訪韓がオーディションのときだったんで、韓国に来る前は、韓国語はもちろんまったく分からなかったし、旅行したこともないんです。
●オーディションは韓国人受験者と一緒に?競争率は?
もちろん、韓国の受験者と一緒にオーディションを受けました。書類審査の後、レッスン室で団体でバーレッスンをするのを審査員がチェックするようになっていました。オーディションが終わってホテルに戻ったんですが、その日、一緒にいた友達の電話にバレエ団から連絡が来たんです。合格したって!でも、韓国バレエのエリートたちが受ける、競争率もすごく高いオーディションなのに、オーディションが終わってこんなに早く合格の連絡がくるなんて信じられなくて。仮に合格が決まっていても、ほかにいい子がいたら、合格通知が取り消しになることもよくあったりするんで、書類にサインするまでは分からないと思ってました。そして、最終的に書類にサインをしてはじめて実感がわきました。本当にうれしかったです。
●韓国での生活にはすぐ慣れましたか?毎日の生活パターンは?
オーディションの後、一度日本に帰り、荷物を持って韓国に来ました。韓国での住まいはバレエ団の外国人用のアパートです。ここで自炊をしています。最初は食べ物も辛いものは食べられないし、まったくハングルが分からなかったので、ストレスもありました。でも少しずつ慣れていって、今では韓国料理ばかり食べています。韓国での生活はもちろんバレエ中心の生活で、1年単位でみると、1ヶ月ほど休みが2回あり、そのほかは月曜日から土曜日まで毎日練習です。基本的に日曜日はお休みなんですが、公演があるときはお休みも返上で練習に追われます。だいたい練習時間は午前から午後2時までですが、公演前はさらに遅くまでやることもあります。
●自炊ということは、食事管理も大変なのでは?
まず、絶対に太っちゃいけないんです。もともとそんなに太るタイプではないんですが、ストレスで考えれば考えるほど、食べてしまう癖があって…韓国に来て間もないころ、一時太ってしまったことがあったんですが、太ると体も重くなるし、思うように体が動かなくなるんです。最近はもう落ち着いてきて、生活や食事の管理もできるようになりました。朝はだいたいヨーグルトぐらい、昼は練習の後。午後2時過ぎ間で我慢して、終わってから食べます。
●休みの日は何を?韓国で好きなスポットは?
団員の子と買い物したり、ご飯を食べたりするぐらいで、遠出したことがほとんどないんです。どこか観光地とか行きたいと思っているんですが、周りがほぼ韓国人なんで、観光客が行くような旅行地に行くことがなくて、ほとんど地元の人が行くところばっかりなんです。東京の人が東京タワーに行かないように、定番の観光スポットなんかも行ったことがないですね。そのほか、長い休みの時は福岡の実家に帰ります。でも最近は1ヶ月日本にいると飽きてしまって…早く韓国に戻りたくなるぐらいなんですョ。
●韓国のバレエ団生活の中で印象深かったこと、うれしかったことは?
野球でいうと、1軍、2軍があるように、以前このバレエ団も1部、2部に分かれていました。私も今は1部に上がったんですが、入団当時は2部にいて、その2部の公演でドイツの演出家の先生に初めてソリストの役をもらったんです。そのときはホントにうれしかったです。群舞とはまた違う一人の舞台が披露できるので、負担も大きい分、満足感や達成感も大きかったです。
●公演は年にどれぐらい?
1年に100回以上は公演があって、国内がメインですが、海外遠征公演に行くこともあります。昨年は日本にも行きました。演目によって公演期間が違いますが、平均的に2~3ヶ月に1本ペースぐらいかな?公演ごとに役が与えられるので、その都度、練習して舞台に臨みます。
●練習中、あるいは韓国生活でつらいこと、つらかったことは?
団員の中では小さい方なので、群舞の役が多いんですが、踊りの細かいスタイルの違いを直すのがやはり今でも大変です。一つの動作をする場合も、手足の先まで神経を使って合わせるのはもちろん、目立ちすぎてはいけないけれど、団体の中でも一人、一人、個性を発揮してはじめて舞台の上での群舞が生きてくるんです。
特にこのバレエ団にいる大部分の子たちのように、韓国での統一された教育環境の中で学んできたんではなく、日本の各スタジオでそれぞれ違う先生からバレエを学び、アメリカのアカデミーではロシアバレエの教育を受け、また日本に戻ってロシア式が「おかしい、やりすぎ…」といわれ直されたり・・・そんな過程を踏んできた私は、今でも先生に細かい動きの違いを指摘されることがあります。これがスタジオや学校であれば、先生は私ができるまで待ってくれますが、ここはプロの世界なんで待ってはくれません。もちろん1度はチャンスをくれます。でも、注意されて、次にできなければ、代わりにできる子を使うことになる可能性もある訳です。
また、入団して今3年半になりますが、毎年新しい団員が入ってきて、下からもぐいぐい押し上げてくるので、負けずに頑張らないといけません。でも、そんなハードルがつらいというよりは、今は一段、一段、着実に越えていくのが、逆に楽しいです。自分の実力が上がっていくのがはっきり分かるので、それを励みに頑張っています。
●言葉の壁は大丈夫?
韓国に来るとき、韓国語は一切勉強してなかったんです。というのも、英語が通じるからわざわざ韓国語を勉強しなくてもいいやと思って。最初は練習のときも説明はすべて英語で聞いて、英語のできる子たちとだけ話をして・・・という毎日でした。でも、先生の中には英語があまりうまくない方もいて、言っていることを逆に理解していたり、「この前こういったのに、なぜ??」というような疑問や混乱が頭の中でめぐる時期もありました。それで、これはだめだと思い、少しずつ韓国語を勉強するようになったんです。
韓国語が耳に入ってくるようになると、情報が今までの2倍、3倍と増えていき、さらに韓国語を話す友達とも仲良くなると、どこを指摘されたのか、どの動きが違うのか、といった細かい内容がわかるようになってきました。いつも、一度指摘されると、頭の中でずっと考えるタイプなので、練習帰りも、食事中も、家でも、ずっとぶつぶつ一人ごとのように、「これがこうだから、これがこうなって…」って言っているみたいで(笑)。
●韓国にはいつ頃までいる予定ですか?
今のところ、いつまで、と決まったものはありません。1ステップ、1ステップ確実に上っていき、もうこれ以上学ぶことがないと思ったら、そのときが、韓国から、そしてこのバレエ団を卒業するときかなって思います。なので、当分の間は韓国でがんばることになりますね。
●韓国での目標、夢は?
韓国にやってきたのがバレエのためだったんで、大きな目標というより、今目の前の目標に向かって努力していきたいと思っています。当面の目標はソリストとして舞台に立つことです。
最後に写真を撮らせていただいたんですが、「今日の衣装、何にしようかってもう昨日は大変だったんです~っ」と無邪気に話す杏奈さん。見ているだけで思わず微笑んでしまうほど、とってもかわいいイメージとはあいまって、この細くて華奢な体の奥に潜む、バレエに対する熱く、まっすぐな思いがしっかり感じられました。「今まで一度もバレエが嫌だとか、嫌いになったことはないんですか?」というナビの質問に、少しの迷いもなく、「一度もないです」と笑顔で答えてくれた杏奈さん。お遊戯みたいで、ただ、ただ、踊りが楽しかった3歳の頃から、ゆっくり、そして自分のペースで確実にステップアップしてきた道のりは、どんなものにも負けずにかんばってきた強さも感じられました。 今日はお忙しいなか、時間を割いていただきありがとうござました!!これから韓国での活躍に期待しています!!がんばってください!!
★★★2011年3月25日から、杏奈さんも出演する作品「ドン・キホーテ」がスタートします!!★★★
ナビも伺う予定ですが、この作品は喜劇ということで、笑いがあちこちにちりばめられた人気の作品だそう。
皆さんもぜひ劇場まで足をお運びくださいね!